フランシスコ法王、来日に寄せて

核時代に懸ける人類生存の橋

(青山学院大学名誉教授・本間照光)

原子力損害賠償制度論を専門とする青山学院大学名誉教授・本間照光による毎日新聞ほかへの寄稿文は、世界全体のひとびとと生きとし生けるものすべての「いのち」が絶滅の危機に瀕しているという認識から(平和公園ではなく)爆心地にひっそりと建つ「原爆落下中心地碑」前でメッセージを発するフランシスコ法王の想いを多くの人に届けたいとの願いが込められています。

※フランシスコ法王:アルゼンチン生まれの移民の子。働きながら工業専門学校を卒業した第三世界出身の初の法王

概要
(約9分半。※フェイスブックのコモンズ村からこのページに来られた方には、この動画はコモンズ村でご覧になった概要動画と同じものですので、視聴をスキップして下にお進みください)


以下、毎日新聞寄稿文より抜粋

1.
ヨハネ・パウロ2世以来38年ぶりの法王日本訪問。掲げられたメッセージが「『すべてのいのちを守る』ために橋を懸ける」。福島原発事故被害者や司法に見捨てられた冤罪者袴田巌さんとの交流も行われると見られています。

2.
移民の子としてアルゼンチンで生まれた法王。法王は現在の世界経済システムが内包する悪が自然環境破壊・難民問題とつながっていて、人類はヒロシマ・ナガサキから何も学ばず、核の脅威がいまや人類を滅亡の瀬戸際まで追いこんでいることにも人々の意識は希薄である、と警告しています。その危惧の先にあるのは、すべてのいのちが消え去る危険、そして、そこで存在をやめる神への神学的危機。

3.
戦争と原爆の被害者に受忍を強い、原発被害者にも受忍を強い、加害者は免責され守られ弱者は切り捨てられる。富を追求しつづける強者は「核戦争下でも日本経済を守る」とする保険制度さえ生み出そうとしていた。矛先が向けられた弱者は強欲な強者によって生み出される大きな「負」を押しつけられ押しつぶされようとしている。

4.
日本国憲法「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」は同9条「戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認」へと続く。これは法王の見ている世界と同じもの。これを世界が共有してこそ核時代に人類生存の橋が懸る。


 本間照光について
 
これまで人類は、個別の生命の終わりにあっても、そこから生まれる新たな生命に希望をつないできた。しかしいま、人類とすべての生命の存続、未来社会の到来を自明のものとすることができるだろうか。  フクシマでは、自然災害がいのちと暮らしの根源をおびやかす原発災害へと続いた人類史上初めてのできごとである。そもそも、核燃料で支えられた日常生活そのものが、それ以前の日常とは決定的に異なるものになっていたのではないか。日常が異なるとき、非日常としての災害の意味もちがってくる。私たちは、人類史的、文明史的な岐路に、立たされているのではないだろうか。  いまここに生きる私たちは、犠牲者の尊厳と思いをつなぎ、未来に生まれる子どもたちを守る責務を負っている。未来の子どもたちがよりよい別の世界を創るためには、未来が保証されていなければならない。私たちは、どんな時代に生きているのか。 (青山学院大学総合研究所公開シンポジウム「災害と人間~核時代の生そして再生を問う~」2012年3月15日より)

 新聞各紙の関連情報
 
  朝日新聞
 
  産経新聞
 
  東京新聞
 
  日本経済新聞
 
  毎日新聞
 
  読売新聞

制作:TrustContext近藤和央 http://isc-creative.com/ kazu1222rimsub@gmail.com
協力:CWSコモンズ村 http://cws.c.ooco.jp/